講座ブログ

第49期 日本児童文学学校・感想

 実感を得られる場所  丸野永史

 
作品を書いて公募等に出してみても、落選ということがわかるだけで、自分の書いたものを誰かが読んだという実感がないまま過ぎ去っていく。
なにかしら受賞でもしないかぎり、その実感は得られないのだと思っていた。
でも、読んでもらった実感がないままでは、作品がいいのか悪いのか、むしろ書いていていいのか悪いのか、それすらわからなくなってくる。とてつもなく無駄なことをしているんじゃないかと思うこともある。
同じようなことを感じている人も多いのではないか、むしろそういう人のほうが多いはずだ、でもそのはずなのに、そういう人と会って話すことはない。
一度そういう人に会って、はなしてみたい。できれば受賞した人とも話をしてみたい。そうしたら、なにか実感を得ることができるのではないかと思っていた。
だから、教室の中に入った時、この中にいる人たちは皆、なにか書いている、自分と近しい気持ちを持った人かもしれない。
しかもスタッフや講師はかつて受賞し、デビューし、一線で活躍する作家たちだ。話をしてみたかった人達がこんなにいる。とてもワクワクした。
田部智子講師も、デビュー前はやはり自分と似たような事を思い、考えたとおっしゃっていた。一線で活躍する先生方、受賞するような人にもそんな時期があって、でもそこから強い気持ちをもって今の場所までいったのだ。
教えていただいた創作を続けていく為のノウハウには、自分の作品がいつかだれかに届く日が来るかもしれない、その可能性に向かうための方法、そのきっかけをもらったみたいで勇気がわいた。
作品講評では、自分の番が近づくと緊張と不安で手から血の気が引いた。
でも、わかりにくいだろうなと思っていた、自分の作品の中の仕掛けに開隆人講師は気がついてくれた。
目の前で、その仕掛けについて解説してくれている。そして自分の作品について、この場の全員が話をしている。確かにこの場にいる全員がちゃんと読んでくれている。それがすごくうれしかった。
日本児童文学学校は、読んでもらえた実感、書いていてもいいんだという実感、そして書くことは先へ続いているのだという実感を得られる場所でした。
 
開校直前での三度目の緊急事態宣言。開校日がまさに宣言期間の初日となりました。主催する側の関係者の皆様は本当に大変だったと思います。なにしろ開校直前だったので時間がない。大変難しい判断だったと思います。それでもこの機会を守っていただいた事に本当に感謝いたします。
2021/05/06