講座ブログ

第49期 日本児童文学学校・感想

子どもが教えてくれること ささき あゆみ

 

書くことが好き。自分の本を出したい。

長い間、そう願ってきたものの、自分の心の中を満たしきるほどの「これを書きたい」というテーマが見つからずに過ごしてきました。

三年前に子どもを授かり、仕事も産休に入った頃、本屋さんで何気なくバーネットの「秘密の花園」を手に取りました。ぱらぱらと読み進めるうちに、子ども時代の自分を取り戻していくような、清冽な風が心を吹き抜けていくような感覚に満たされました。

子どもが産まれてからは、絵本もたくさん読みきかせてきました。「もっと読んで!」という子を膝にのせて絵本の扉を開くとき、この上ない幸せが訪れます。

子どもとお散歩するようになると、これまで忘れかけていた小さな生き物たちを再び「発見」する日々が始まりました。ハコベや、カタバミ、ダンゴムシに、てんとう虫・・・。これまでも確かに近くにあったはずなのに、「大人の目線」になって見えなくなってしまっていたものたち。そうしたものの存在と、再び出会うことができたとき、自分の心の扉が開けたような気がしました。

こうしたいくつかの経験が自分の心に折り重なっていくうちに、子どものための物語を紡ぎたいという想いが強くなりました。子どもといっしょに喜びたいこと。分かち合いたいこと。伝えたいこと。ようやく今、「書きたいこと」が、ぽこぽこと音を立てて、心の底から湧いて出てきた感じです。

今回の児童文学学校では、私が初めて書いた物語を辻貴司先生に講評していただきました。「大人と子どもの感じ方は違う。この結末を、大人は面白く思っても、子どもの中にはがっかりしてしまう子もいるかもしれない。」というご指摘をいただき、目から鱗であると同時に、お言葉が心にすとんと落ちました。

自分の書いた作品は、本当に子供のための物語になっているか。大人の物語になってはいないか。子どもが教えてくれることに、もっともっと、目を凝らして、耳を澄ましていこうと思います。

2021/07/15