講座ブログ

2020年04月

おすすめの本の紹介 ④

 あこがれのひと     林 妙子

仕事と買い出し以外、家に閉じこもっている。超アウトドア派の私には苦痛極まりない。心身のバランスを崩しかけている(体重増加)が、世のため人のためそして自分のために日々家活。

1冊の本を読みたくなった。私のバイブル『アンネの童話集』。ずっと私のそばにある、お話を書くきっかけを与えてくれた本。今なら少しだけ、アンネに近づけるかも。

小学5年生の頃買ってもらったこの本には、13編の物語がちりばめられている。読み返すと、手書きのルビがふられており、幼い頃の自分をいじらしく思う。

アンネ14、5歳の頃の作品だ。働き者の少女。今と変わらないいじめの構図。自分を出せずにいる内気な子。人に愛を与えることの幸せ。人は人であるという真実。 

とても具体的で、ときに宗教的で、それでいてかわいらしくて、やさしい描写だ。

なかでも私は「リタ」という物語が好きだ。小学校の読み聞かせに使ったこともある。何度読んでもやっぱり好き。お話に出てくるフルーツパイに魅かれているのはもちろんだけど、何ともいえない満ち足りた気分になれるのだ。幼い頃のように純粋に、私もリタみたいでありたい、と。

 終わりの見えない隠れ家生活、物音ひとつたてられない緊張状態の中で、希望を見失わずお話を書くことができたアンネを思うと、涙があふれる。私も窮屈だけど、比べものになるわけがない。アンネは家族と離れる恐怖、死の恐怖と闘いながら、書き続けたのだ。

 せめてお話を書いている間だけでも、アンネが幸せだったらいいな。お話を書くって楽しいよね。ペンと紙の前では自由だよね。

 本の中の笑顔のアンネに話しかける。

 そして私はまた、アンネに力をもらうのだ。

『完訳 アンネの童話集』 小学館  訳者 木島和子 

 外出できない今だから、アンネを読むというのは、とてもいいアィディアですね。わたしも読んでみようと思いました。

 林妙子さん、勇気をだして書いてくださって、ほんとうにありがとう。

 講座ブログでは自粛の今だから、だれかにすすめたいおすすめ本を募集しています。ぜひ、書いて事務局に送ってください。

 おすすめ本リレーがつながっていけばうれしいです。 (赤羽じゅんこ)

 

 

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2020/04/25

創作教室に参加して

終わらないもの     星空久美子

 
二月に入ってからまもなく、私は時々いいようのない不安に襲われていました。理由は、二年間続けていた創作教室を、この四月からやめようと決めていたからです。
 二週間ごとに作品を書くことができたのは、創作教室があったからです。
 ある時期は、どんどん長編を書けと言われ、別の時期には枚数に忠実にと言われ、落ち込んでいれば「そんな暇があったら、ガシガシ書け」と言われ、ペンネームを決めたと言えば「こっちの方がいい」と別の案を出されてそっちを強く薦められ真剣に悩みまくり、あっちの本が良いから読めと紹介され、こっちにはこんな公募があると教えてもらい、ガハガハ笑ったり、真剣に論じ合ったり……。
 作品については、これがよくない、こうすればいい、いやそれでいい、全くダメ、これはすごくいい、面白くなるのは後半だけなどと散々言われて、最後に先生がビシッと的確なご指導をして下さる……。
 これらのすべてを失うことが、創作教室をやめるということなのです。それらを失って、書き続けることができるのでしょうか?
こうして書いてみますと、やめるべきではなかったのかもと思えますね。
 でも自分のペースでじっくり考えぬいて書く時間が必要になってきました。それがわかっていながら不安になってしまったのです。失うものが大きすぎて。
 一方、大きすぎるものは〝得たもの〟でもあるのです。
 一言で言いますと……ああ! 一言では言えません。ここにはとても書き切れません。なんといっても〝大きすぎる〟のですから。
ただ一つだけ、ここに書いておきます。
創作教室は終わっても、終わらないものもたくさんあります。そうだ! だから、創作教室はいつかは卒業してもいいのです。
 さて〝終わらないもの〟とは何でしょう?
 
星空さん、創作教室への思い、伝わってきました。ありがとうございます。
『終わらないもの』が自分の言葉にできるくらいまでわかったら、また、講座ブログに書いてほしいです。(赤羽じゅんこ)

 

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2020/04/20

おすすめの本の紹介 ③

 おすすめの絵本 松原さゆり

 ほんとうに大変な世の中になってしまい、毎日不安です。テレビのニュースで、心が暗く冷たくなってしまいます。

 そんな時だから、大人も絵本を読んでみませんか? 絵本は心の処方箋ともいわれ、ヒーリング効果もあり、癒してくれます。

 私が今回お勧めするのは、「花さき山」文 斎藤隆介 絵 滝平二郎 です。

 子どもの時にだいすきだった絵本で、母親にもよんでもらっていました。そして、子ども達へもよく読み聞かせました。いかに民話をそれらしく読み聞かせるかというのにはまり、上手に読める自分によっていたときもあります。それからは、だんだんと自分のために、心からあじわっていると。いつのまにか、この絵本をなんと暗記していました。

 ご存じだと思いますが、簡単な内容は。

 お祭りのための山菜をとりに山へ出かけた、十才のあやは山ンばに出会います。

 不思議な話を山ンばはあやにします。「この山の花は、村の人間が優しいことをするたびに咲く」と。そこには、あやが昨日咲かせた赤い花もありました。それは祭りのために着物を買ってほしいと、母親にだだをこねる妹のために、あやは自分はいらないから妹に買ってあげてといいました。貧しい家なので母親は助かったし、妹は喜んだ。あやはせつなかった。だけど、このきれいな花がさいたのです。小さい青い花は、双子の赤ん坊の上の子が、母親のおっぱいを下の子のためにがまんをして、今咲かせているのです。

「つらいのをしんぼうして、じぶんのことよりひとのことをおもって、なみだをいっぱいためてしんぼうすると、そのやさしさとけなげさがこうして花になってさきだすのだ」

 人知れずに誰かのために自分を犠牲にする。他者を活かすことで、自分が活きることができると。そんな話です。

 読後、静かに、心の中に温かなものが満たされていきます。

 がまんとか犠牲にご意見のある方もおられるかと。でもこれは、ちょっとした他者を思いやる優しさです。人に与えられるのは、お金や力や能力ばかりではなく、なにも持たないあやが、花を咲かせることができるんです。けなげで人を思いやることの優しさが、美しい花となると。

「あっ! いま、花さき山で、おらの花がさいてるな」最後の一文。

あやが、おとうやおっかあにそんな話はうそだと笑われて、だれにも信じてもらえなくても、今、花がどこかにさいているんだと、自分を認めている姿は、とても前向きです。

 作者のあとがきで、「われわれは一人ではなくて、みんなの中の一人だ、という自覚を持つことです。みんなの中でこそ、みんなとのつながりを考えてこそ、自分が自分だと知ったことです」と。

そう、「みんなの中の一人」として生きていくには、ぐっと耐える瞬間があり、その時、花がどこかで咲くという自己肯定です。

今、まさに外出ですら自粛でがまんです。私の花が、あなたの花が、どこかで咲いていますよね。

 もちろん絵本ですので、黒をバックにした切り絵が美しく、どんと心にせまります。切り絵のため表情がかたいですが、それだけに心のひだを感じます。  

 このページの、このページの、この絵と、ページをめくる楽しさがあります。

 ページをめくっていると、昔をなつかしむ気持ちにもなってきます。そう、子どものころの純真な気持ちを思いだしたりもします。

 また、新たな気付きも得られるのです。

 私は、山ンばの限りない優しさと慈愛に気付きました。降り注ぐ優しさと見守る温かさと厳しい姿、まさに山ンばこそが花さき山だと、思えてきます。

「おどろくんでない。おらは、この山に、ひとりですんでいるばばだ」最初の一文。

 山ンばの人生に興味をひかれます。山にひとりで住むって、いきさつに何があったのでしょう。

 いろいろ考えます。「おどろくんでない。」だから、とんでもないことだったりして。

 どうでしょう。なかなかおもしろいと思いませんか?

 大人が、今だから読む絵本、あると思います。

 

 

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2020/04/14

おすすめの本の紹介 ②

おすすめの本の紹介  辻 貴司 

 

昨年読んだ本のなかで、いちばんおもしろかった本を紹介します。

その名も
『くろて団は名探偵』
(岩波書店、ハンス・ユルゲン・プレス 作、大社玲子 訳)

もともとは別の出版社から35年ほど前に出ていたもの。
しばらく絶版状態だったのですが、
2010年に岩波少年文庫から復刊!

本屋さんで何気なく手にとると、
おおおーーー!!
もうページをめくる手が止まらない。

「くろて団」という子どもたち4人とリスだけで
事件を推理しながら、犯人を追いかけるストーリーにドキドキします。

3ページごとにのっている、緻密なイラストもすばらしい!

イラストには、事件を前進させるヒントがかくされていて、
それがかなり本格的で、ナゾときがとっても楽しい。

答えを見つけながら読み進めると、大きな事件がどんどん解決に向かっていきます。

小学生3年生くらいから、ハマるはず↓
https://www.iwanami.co.jp/book/b269673.html

もっと読みたい人には、
息子さんのユリアン・プレス作
『くろグミ団は名探偵』
もあります。

試し読みできます↓
https://www.iwanami.co.jp/book/b372713.html

ぜひ!

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2020/04/09

おすすめの本の紹介

新型コロナウィルスの感染拡大で、外出自粛が長く続きます。東京は学校の開始も延期されました。

講座ブログでも、日本児童文学学校が中止になり、書くことがなくなってしまいました。

そこで、本を読んで少しでもリフレッシュしてほしいと、おすすめ本を紹介していこうと思いました。

わたしも紹介したいって方はぜひ、参加してください。日本児童文学事務局講座ブログ係まで、書いたものを送ってください。

おまちしています。

 

自粛の間におすすすめ本  高田由紀子

                                 

私のおすすめする本は、『そして、バトンはわたされた』で本屋大賞を受賞された瀬尾まいこさんのあと少し、もう少し』(新潮社)です。

元いじめられっ子の設楽(なんと名前が亀吉)、不良の大田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、2年の俊介、そして陸上部部長の桝井。

中学対抗の駅伝大会に向けて寄せ集められたこの6人が、各章の主人公となり、たすきと同時に物語をつないでいきます。

もちろん、6人が県大会をめざしていく姿だけでも感動するのですが、私は登場人物たちが、表で見せている顔とは違う面を持っていることが見えてくる過程にジーンとしました。

裏の部分を隠している子もいれば、自分では気づいていない子もいます。

例えば部長の桝井はいつも冷静でさわやかなのですが、のんびりした顧問の上原先生にこう言われます。「桝井君さ、自分の深さ3センチのところで勝負してるんだよ。だからさわやかに見える。それだけしか開放しないで、生きていけるわけないのにね」

裏の部分が見えてきても、ぶつかっても、駅伝を通して6人の絆は深まっていきます。メンバーに受け入れられるのと同時に、少年たちはどんな自分をも受け入れていけるようになっていくのです。

瀬尾まいこさんにかかると、たとえ本人が認めたくないと思っているような面も、とても人間らしく魅力的に見えてくるから不思議です。人へのまなざしの優しさ、受容の深さを感じられます。

なかなか友人や仲間に会えないこの期間に、お読みいただきたいと思います。

子どもだけでなく、大人にもぜひおすすめします!

きっと、大切な人をもっと大切に感じられるとともに、自分のいろんな面をふりかえり、受け入れるきっかけになるかもしれません。

 

 

 

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2020/04/05