講座ブログ

おすすめの本の紹介 ⑦

柚木麻子のまっとうな読まされ方 しめのゆき

 

 柚木麻子には、はぐらかされてばかりいる。読み始めから気が抜けない。この話は明るいのか? 暗いのか? そこからまったく油断ならず、上下左右に揺さぶられて、着地点が見えそうで見えない。最後はしっかり涙まで流させられて、感動させられ、まんまと作者の手の上で転がされている。それが柚木麻子のまっとうな読まされ方だ。

『本屋さんのダイアナ』(新潮社)は、家庭に恵まれない少女が、腹心の友を得て、自分の力と感性で精一杯、おとなになっていく物語――どこかで、聞いたことが……?

 そう、この小説は『赤毛のアン』(モンゴメリ著)を下敷きにしている。主人公の名前は、ダイアナ。今流行りのドキュンネームで、よりによって競馬好きの、生まれてこの方会ったこともない父親が、大穴(おおあな)を当てることを夢見てつけた名前だ。水商売で母一人、子一人の生活を支える母親の商売ネームは、ティアラ。キラキラしかしていない、頭が空っぽの母親と、この名前のせいでろくな人間関係を築けないと悲劇のヒロインになっているダイアナの前に、ダイアナが求めても手に入らない暮らしをやすやすと送っている清楚な少女、彩子(アンにあたる)が現れる。

 二視点で進む物語は、小学校を卒業すると同時に二人が交わることは無い。だが、読者は、二人の結びつきを信じて疑わない。その要因のひとつに、本がある。『アン』以外にも要所要所で登場する『若草物語』『風と共に去りぬ』『悲しみよ、こんにちは』など古典文学のエッセンスを共有する二人と、読者自身もまた、自分の読書体験を通じて、結びつきを深めていくのだから(もちろんこれらをすべて読んだことがなくても、まったく問題ない)。そして、ダイアナと同じ名前の主人公が登場する、作中作が、すべてをつなぐ、とても大事なカギを握っている。

 と、こんな紹介が、まったく意味をなさないほどの展開をぜひ読んでみてもらいたい。そして、この作品を気に入って、ほかの柚木作品に手を出した時、「え? これ同じ作家さん?」という大きな驚きに出会えることも、間違いない。

  

 

2020/05/16

おすすめの本の紹介⑥

元気になれる小説   赤羽じゅんこ

 

自粛で時間ができたら、いつもは読まない長編の小説も読みたいところです。

そんなところでわたしが紹介するのは、原田マハさんの書いた成長小説『生きる ぼくら』です。

大人向けの小説ですが、十分、児童文学的でおもしろい!!

いじめをうけ、ひきこもりの麻生人生が主人公。ある日起きたら、いつもご飯をつくってくれたお母さんがいなくなっていました。

「わたしはもう、疲れ果ててしまいました。」という書き置きと、この中のだれかと連絡をとって、生きていってくださいと年賀状の束をのこして。

人生は、その中から蓼科に住むおばあちゃんのところに行くことにしまいた。昔、何度もいったことがあるからです。

しかし、蓼科に着くと、おばあちゃんは認知症で、おまけに知らない女の人がおばあちゃんと住んでいて・・・・。

そんな出だしてどうなるのかとぐいぐい引きこんで読ませてくれます。

蓼科の風景がまたきれい。御射鹿池という東山魁夷の絵になった場所も出てきます。

 

わたしがこの本と出会ったのは、昨年の中学生ビブリオバトルの決勝戦大会。残念ながらチャンプ本にはなれませんでした。

しかし、決勝戦に残った6人ほどの中で、わたしはこの本に一番ひかれ、読んでみたいと思って即、購入しました。

だけど、ずっとそのまま、机に積んでおくまま。忙しさにまぎれて、最後まで読めずにいました。

巣ごもりになって、一気読み! 長編の成長小説を読み終えると、やったー、読書したという、感動が味わえます。

読み出したら、小説の世界にどっぷりつかって、人生くんといっしょに、愕然としたり、悲しんだり、喜んだり。いろんな感情が味わえます。また、蓼科の山々が目の前にうかんできます。おいしい空気を深呼吸したような、旅にでたような気持ちになります。

今、田んぼで稲が穂をのばす時期。この本を読むのに、ぴったりの季節ですよね。

ぜひ、読んでみてください。

2020/05/09

おすすめの本の紹介 ⑤

「川べ」へ帰るとき 大澤桃代

 

  心が不安に揺れるとき、ざわついて乱れるとき、戻りたい場所があります。帰りたい世界があります。

 それがケネス・グレーアム作、石井桃子訳の『たのしい川べ』す。この一見地味なファンタジー小説は、川べで生まれ育ったわたしにとって、ファンタジーというよりリアルに近いもので、一ある種の精神安定剤となっているのかもしれません。

 このお話は、動物と人間が共存する世界です。モグラの出立で始まり、ネズミとの友情、大金持でわがままなヒキガエルの冒険を経て、アナグマの策略によりヒキガエルの屋敷が取り戻されるまでが描かれています。

 デフォルメされた動物たちが、人間界での役割を引き受けているのは確かですし、そういった読み方も大変興味深いですが、分析や考察は他の方にお任せしましょう。わたしがこのお話から受け取るものは、お話そのものの面白さと、自然界への畏怖、尊敬、感謝、愛情ですから。

 お話は情景描写をふんだんに盛り込みつつ、ゆっくりと進みます。モグラが初めて出会う川の流れ、その描写は新鮮な驚きに溢れていて、何回読んでも飽くことがありません。このテンポが心地良いのです。

 特筆すべきは「あかつきのパン笛」の章です。石井桃子よれば、後で書き足された章で、賛否両論あるようですが、わたしは一番好きです。モグラとネズミがカワウソの子を探し、その子が「パンの神」に守られ無事でいることがわかる場面は、激しくも静かで優美で厳かです。そして最後にパンの神の与える「おくりもの」、その深すぎる配慮にはため息しか出ません。

 このお話は、もともと作者のケネスが幼い息子さんのために語ったものを起こしたものです。息子さんはヒキガエルのところが大好きで、喜んで聞いていたといいます。そこで、わたしも我が子らに聞かせました。そうです、寝る前の読み聞かせです。結果、三分もたたず子どもらは爆睡、いつまでたってもネズミさんにもヒキガエルさんにも会えませんでした。しかも、まったく覚えていないようです。一方わたしはわたしで、夢中になって読んでいて子らが寝たことにも気が付かず……この親にしてこの子らありです。

 ?十年も前の良き思い出です。

 

2020/05/02

おすすめの本の紹介 ④

 あこがれのひと     林 妙子

仕事と買い出し以外、家に閉じこもっている。超アウトドア派の私には苦痛極まりない。心身のバランスを崩しかけている(体重増加)が、世のため人のためそして自分のために日々家活。

1冊の本を読みたくなった。私のバイブル『アンネの童話集』。ずっと私のそばにある、お話を書くきっかけを与えてくれた本。今なら少しだけ、アンネに近づけるかも。

小学5年生の頃買ってもらったこの本には、13編の物語がちりばめられている。読み返すと、手書きのルビがふられており、幼い頃の自分をいじらしく思う。

アンネ14、5歳の頃の作品だ。働き者の少女。今と変わらないいじめの構図。自分を出せずにいる内気な子。人に愛を与えることの幸せ。人は人であるという真実。 

とても具体的で、ときに宗教的で、それでいてかわいらしくて、やさしい描写だ。

なかでも私は「リタ」という物語が好きだ。小学校の読み聞かせに使ったこともある。何度読んでもやっぱり好き。お話に出てくるフルーツパイに魅かれているのはもちろんだけど、何ともいえない満ち足りた気分になれるのだ。幼い頃のように純粋に、私もリタみたいでありたい、と。

 終わりの見えない隠れ家生活、物音ひとつたてられない緊張状態の中で、希望を見失わずお話を書くことができたアンネを思うと、涙があふれる。私も窮屈だけど、比べものになるわけがない。アンネは家族と離れる恐怖、死の恐怖と闘いながら、書き続けたのだ。

 せめてお話を書いている間だけでも、アンネが幸せだったらいいな。お話を書くって楽しいよね。ペンと紙の前では自由だよね。

 本の中の笑顔のアンネに話しかける。

 そして私はまた、アンネに力をもらうのだ。

『完訳 アンネの童話集』 小学館  訳者 木島和子 

 外出できない今だから、アンネを読むというのは、とてもいいアィディアですね。わたしも読んでみようと思いました。

 林妙子さん、勇気をだして書いてくださって、ほんとうにありがとう。

 講座ブログでは自粛の今だから、だれかにすすめたいおすすめ本を募集しています。ぜひ、書いて事務局に送ってください。

 おすすめ本リレーがつながっていけばうれしいです。 (赤羽じゅんこ)

 

 

2020/04/25

創作教室に参加して

終わらないもの     星空久美子

 
二月に入ってからまもなく、私は時々いいようのない不安に襲われていました。理由は、二年間続けていた創作教室を、この四月からやめようと決めていたからです。
 二週間ごとに作品を書くことができたのは、創作教室があったからです。
 ある時期は、どんどん長編を書けと言われ、別の時期には枚数に忠実にと言われ、落ち込んでいれば「そんな暇があったら、ガシガシ書け」と言われ、ペンネームを決めたと言えば「こっちの方がいい」と別の案を出されてそっちを強く薦められ真剣に悩みまくり、あっちの本が良いから読めと紹介され、こっちにはこんな公募があると教えてもらい、ガハガハ笑ったり、真剣に論じ合ったり……。
 作品については、これがよくない、こうすればいい、いやそれでいい、全くダメ、これはすごくいい、面白くなるのは後半だけなどと散々言われて、最後に先生がビシッと的確なご指導をして下さる……。
 これらのすべてを失うことが、創作教室をやめるということなのです。それらを失って、書き続けることができるのでしょうか?
こうして書いてみますと、やめるべきではなかったのかもと思えますね。
 でも自分のペースでじっくり考えぬいて書く時間が必要になってきました。それがわかっていながら不安になってしまったのです。失うものが大きすぎて。
 一方、大きすぎるものは〝得たもの〟でもあるのです。
 一言で言いますと……ああ! 一言では言えません。ここにはとても書き切れません。なんといっても〝大きすぎる〟のですから。
ただ一つだけ、ここに書いておきます。
創作教室は終わっても、終わらないものもたくさんあります。そうだ! だから、創作教室はいつかは卒業してもいいのです。
 さて〝終わらないもの〟とは何でしょう?
 
星空さん、創作教室への思い、伝わってきました。ありがとうございます。
『終わらないもの』が自分の言葉にできるくらいまでわかったら、また、講座ブログに書いてほしいです。(赤羽じゅんこ)

 

2020/04/20

おすすめの本の紹介 ③

 おすすめの絵本 松原さゆり

 ほんとうに大変な世の中になってしまい、毎日不安です。テレビのニュースで、心が暗く冷たくなってしまいます。

 そんな時だから、大人も絵本を読んでみませんか? 絵本は心の処方箋ともいわれ、ヒーリング効果もあり、癒してくれます。

 私が今回お勧めするのは、「花さき山」文 斎藤隆介 絵 滝平二郎 です。

 子どもの時にだいすきだった絵本で、母親にもよんでもらっていました。そして、子ども達へもよく読み聞かせました。いかに民話をそれらしく読み聞かせるかというのにはまり、上手に読める自分によっていたときもあります。それからは、だんだんと自分のために、心からあじわっていると。いつのまにか、この絵本をなんと暗記していました。

 ご存じだと思いますが、簡単な内容は。

 お祭りのための山菜をとりに山へ出かけた、十才のあやは山ンばに出会います。

 不思議な話を山ンばはあやにします。「この山の花は、村の人間が優しいことをするたびに咲く」と。そこには、あやが昨日咲かせた赤い花もありました。それは祭りのために着物を買ってほしいと、母親にだだをこねる妹のために、あやは自分はいらないから妹に買ってあげてといいました。貧しい家なので母親は助かったし、妹は喜んだ。あやはせつなかった。だけど、このきれいな花がさいたのです。小さい青い花は、双子の赤ん坊の上の子が、母親のおっぱいを下の子のためにがまんをして、今咲かせているのです。

「つらいのをしんぼうして、じぶんのことよりひとのことをおもって、なみだをいっぱいためてしんぼうすると、そのやさしさとけなげさがこうして花になってさきだすのだ」

 人知れずに誰かのために自分を犠牲にする。他者を活かすことで、自分が活きることができると。そんな話です。

 読後、静かに、心の中に温かなものが満たされていきます。

 がまんとか犠牲にご意見のある方もおられるかと。でもこれは、ちょっとした他者を思いやる優しさです。人に与えられるのは、お金や力や能力ばかりではなく、なにも持たないあやが、花を咲かせることができるんです。けなげで人を思いやることの優しさが、美しい花となると。

「あっ! いま、花さき山で、おらの花がさいてるな」最後の一文。

あやが、おとうやおっかあにそんな話はうそだと笑われて、だれにも信じてもらえなくても、今、花がどこかにさいているんだと、自分を認めている姿は、とても前向きです。

 作者のあとがきで、「われわれは一人ではなくて、みんなの中の一人だ、という自覚を持つことです。みんなの中でこそ、みんなとのつながりを考えてこそ、自分が自分だと知ったことです」と。

そう、「みんなの中の一人」として生きていくには、ぐっと耐える瞬間があり、その時、花がどこかで咲くという自己肯定です。

今、まさに外出ですら自粛でがまんです。私の花が、あなたの花が、どこかで咲いていますよね。

 もちろん絵本ですので、黒をバックにした切り絵が美しく、どんと心にせまります。切り絵のため表情がかたいですが、それだけに心のひだを感じます。  

 このページの、このページの、この絵と、ページをめくる楽しさがあります。

 ページをめくっていると、昔をなつかしむ気持ちにもなってきます。そう、子どものころの純真な気持ちを思いだしたりもします。

 また、新たな気付きも得られるのです。

 私は、山ンばの限りない優しさと慈愛に気付きました。降り注ぐ優しさと見守る温かさと厳しい姿、まさに山ンばこそが花さき山だと、思えてきます。

「おどろくんでない。おらは、この山に、ひとりですんでいるばばだ」最初の一文。

 山ンばの人生に興味をひかれます。山にひとりで住むって、いきさつに何があったのでしょう。

 いろいろ考えます。「おどろくんでない。」だから、とんでもないことだったりして。

 どうでしょう。なかなかおもしろいと思いませんか?

 大人が、今だから読む絵本、あると思います。

 

 

2020/04/14

おすすめの本の紹介 ②

おすすめの本の紹介  辻 貴司 

 

昨年読んだ本のなかで、いちばんおもしろかった本を紹介します。

その名も
『くろて団は名探偵』
(岩波書店、ハンス・ユルゲン・プレス 作、大社玲子 訳)

もともとは別の出版社から35年ほど前に出ていたもの。
しばらく絶版状態だったのですが、
2010年に岩波少年文庫から復刊!

本屋さんで何気なく手にとると、
おおおーーー!!
もうページをめくる手が止まらない。

「くろて団」という子どもたち4人とリスだけで
事件を推理しながら、犯人を追いかけるストーリーにドキドキします。

3ページごとにのっている、緻密なイラストもすばらしい!

イラストには、事件を前進させるヒントがかくされていて、
それがかなり本格的で、ナゾときがとっても楽しい。

答えを見つけながら読み進めると、大きな事件がどんどん解決に向かっていきます。

小学生3年生くらいから、ハマるはず↓
https://www.iwanami.co.jp/book/b269673.html

もっと読みたい人には、
息子さんのユリアン・プレス作
『くろグミ団は名探偵』
もあります。

試し読みできます↓
https://www.iwanami.co.jp/book/b372713.html

ぜひ!

2020/04/09

おすすめの本の紹介

新型コロナウィルスの感染拡大で、外出自粛が長く続きます。東京は学校の開始も延期されました。

講座ブログでも、日本児童文学学校が中止になり、書くことがなくなってしまいました。

そこで、本を読んで少しでもリフレッシュしてほしいと、おすすめ本を紹介していこうと思いました。

わたしも紹介したいって方はぜひ、参加してください。日本児童文学事務局講座ブログ係まで、書いたものを送ってください。

おまちしています。

 

自粛の間におすすすめ本  高田由紀子

                                 

私のおすすめする本は、『そして、バトンはわたされた』で本屋大賞を受賞された瀬尾まいこさんのあと少し、もう少し』(新潮社)です。

元いじめられっ子の設楽(なんと名前が亀吉)、不良の大田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、2年の俊介、そして陸上部部長の桝井。

中学対抗の駅伝大会に向けて寄せ集められたこの6人が、各章の主人公となり、たすきと同時に物語をつないでいきます。

もちろん、6人が県大会をめざしていく姿だけでも感動するのですが、私は登場人物たちが、表で見せている顔とは違う面を持っていることが見えてくる過程にジーンとしました。

裏の部分を隠している子もいれば、自分では気づいていない子もいます。

例えば部長の桝井はいつも冷静でさわやかなのですが、のんびりした顧問の上原先生にこう言われます。「桝井君さ、自分の深さ3センチのところで勝負してるんだよ。だからさわやかに見える。それだけしか開放しないで、生きていけるわけないのにね」

裏の部分が見えてきても、ぶつかっても、駅伝を通して6人の絆は深まっていきます。メンバーに受け入れられるのと同時に、少年たちはどんな自分をも受け入れていけるようになっていくのです。

瀬尾まいこさんにかかると、たとえ本人が認めたくないと思っているような面も、とても人間らしく魅力的に見えてくるから不思議です。人へのまなざしの優しさ、受容の深さを感じられます。

なかなか友人や仲間に会えないこの期間に、お読みいただきたいと思います。

子どもだけでなく、大人にもぜひおすすめします!

きっと、大切な人をもっと大切に感じられるとともに、自分のいろんな面をふりかえり、受け入れるきっかけになるかもしれません。

 

 

 

2020/04/05

第48期日本児童文学学校・中止

大変残念ですが、第48期日本児童文学学校は、今年の開校を見送ることとなりました。

 

東京都は、新型コロナウィルスの感染が広がり、週末の外出自粛要請まで出ました。そのこともあってか、受講申し込みもふるわず、規程の人数まで達することができませんでした。このような連絡をしなければならず、本当に申しわけなく、残念です。

第48期日本児童文学学校は、今、活躍されている人気作家、ベテラン作家を講師にまねき、来ていただいた方に満足してもらえる講座にしようと、昨年から準備をし、話し合いを重ねてまいりました。

新型コロナウィルスの感染の拡大もありましたが、早くから申し込まれた受講生もいらっしゃったこともあり、なんとか規模を縮小してでもできないかと検討を続けて、最後の最後まで開講の方向で宣伝準備したため、決定が遅くなったことお詫び致します。 

また、提出された作品には、感想、アドバイスを添え、返却しますので、少々お待ちください。

創作教室のほうは、一ヶ月開始を遅らせて、開始する準備をすすめています。まだ、若干名ですが空きがありますので、事務局に連絡してみてください。

実作通信講座のほうは、今回は今までになくたくさんの方が申し込まれています。これからでもだいじょうぶです。お待ちしております。

 

 

 

 

 

2020/03/30

葦原かもさんより

第54回講談社児童文学新人賞佳作を受賞しデビューされて、活躍されている葦原かもさんは、なんと日本児童文学学校の卒業生です。かよっていた当時のことを思いだして、書いていただきました。

「本気」と「仲間」に出会えた児童文学学校              葦原かも

 

 私が童話作家になりたいと思ったのは、小学校のときでした。そのときから、書いたお話を担任や国語の先生に見せたりしながら、中学、高校、大学と、ぽつりぽつり書き続け、大人になりました。就職してもなお、本の選定をしている先生に作品を見せたりしながら、ぽつり…ぽつりと書いておりました。「20代のうちにデビューをめざしてはどうか」と言われたものの、遠い遠い目標にしか思えませんでした。そんな時、「日本児童文学」に載っていた「第20期児童文学学校」の募集を見つけて、「こういうので、ちゃんと勉強してみたら何かが変わるかも」、と思ったのが、申し込んだきっかけでした。会場は神楽坂で、職場に近く通うこともできそうでした。

 20期は、受講者が多く、Aチーム、Bチームに分かれており、活気がありました。講義は、砂田弘さん、森忠明さん、相原法則さんなどなど、どれも刺激的で、丘修三さんや泉啓子さんなどの実作指導も、とてもためになりました。だからといって、その期間内にみるみる、めきめき力がついたわけではありません。でも卒業時に得たものは、「本気でやってみよう」という気持ちと、そこから生まれた同人「にじゅうまる」の仲間でした。

 その後、実作指導でお世話になった泉啓子さんをアドバイザーに、毎月毎月、合評会を続け、同人誌も年に一度、出し続けました。そしてようやくデビューすることができたのは、児童文学学校を卒業してから、なんと四半世紀近くも過ぎてからでした。でも、子どものころからの夢を持ち続けることができたのは、ともに書きつづけてきた仲間と、元をたどれば児童文学学校の存在があればこそで、それがなければ、夢はディミヌエンドで消滅してしまったと思うのです。

 本を出すことができてなにより嬉しかったのは、子どもに向けて書いたものを子どもが読んでくれることでした。そして今、デビューはゴールではなくスタートなのだと、青ざめながら実感しているところです。当然ながら、デビューしたからと言って、本になる作品がつるつる書けるようになるわけではありません。ただ、本として世の中に出ていく作品というのは、子どもの心に届くものであること、おもしろかったり感動したり、読んでよかったなあと思ってもらえるものであること、などにあらためて気づき、そうでなくては編集者さんが「出そう」と思ってくれないことも実感しました。50代で地図作成の旅への第一歩を踏み出した伊能忠敬を尊敬しつつ、ぺたりぺたり、前に進んでいきたいと思っています。

 

2020/03/24