公募のルールとマナー

原稿作成編

1手書き原稿とパソコン(ワープロソフト)で書いて印刷した原稿、両方ありますが、応募するにはどちらがいいのでしょうか。
パソコンで作った原稿があるのなら、手書きよりもそちらを応募してください。手書き原稿は不可という賞もあります、ご注意ください。
また賞によっては、パソコン原稿の場合、最終選考時にデータを提出させるケースがありますので、データは送った原稿と同じ状態で保存しておきましょう。
要項にはよく「400字詰め原稿用紙で○○枚まで」とありますが、これはあくまでも400字詰め原稿用紙に換算すると何枚か、という意味。原稿用紙を使え、ということではありません。
実際にこれからプロの作家としてデビューする場合、出版社とはパソコンで作った原稿をメール等でやりとりすることになります。
パソコンが使えないと非常に不利です。プロを目指すなら(下書きは手で書くのも自由ですが)清書はパソコンでできるようになってください。
なお、パソコンを使うなら、400字詰め原稿用紙は使いません。原稿用紙に(枠内に合わせて)文字を入れたり白紙にわざわざ枠線を印刷したりしてはいけません。
2児童書には漢字にふりがながふってあることが多いのですが、応募原稿にもふる必要がありますか?
作者が名付けた地名や人名などの固有名詞以外に、ふる必要はありません。ふりがなをふらなければ読めないような漢字を使うと、選考時の印象が悪くなる可能性があります。「子どもに向けて書く」という意識がないのでは? と疑われるのです。
児童書のふりがなは、作者ではなく、出版社の判断でふっているものです。
3小学生が読めるように、漢字をひらがなに直して書きたいのですが、ルールはありますか?
その作品を読んでほしい学年までに習う漢字が基本になります。しかし、実際に教科書通りでは、かえって読みにくいこともあります。作品内でその単語ごとに漢字かひらがなかどちらかに統一されていれば、問題ありません。その学年で習っている漢字かどうかではなく、その言葉自体を子どもが理解できるかを基準にしましょう
4童話賞に応募します。すべてひらがなで、分かち書きにしたいのですが。
特にする必要はなく、漢字も適宜使った方が選考の際に読みやすいでしょう。
5規定に縦書きという指示がない場合、横書き原稿で応募してもよいでしょうか?
日本の文学は未だに縦書きが主流です。「当然、縦だ」と思われて指示がない場合もあるでしょう。
指示がないなら横書きを理由で選外になることはないはずですが、選考委員が「縦で当然」と思っている場合、違和感を覚えるでしょう。指示がなくても、縦書きをお勧めします(執筆段階では縦でも横でも、書きやすいスタイルでかまいません。縦書きにするのは「応募原稿の印刷」の際です)。
6イラストが得意なので、挿絵をつけたいのです。
応募要項に「挿絵をつけてほしい」と書かれていない限り、つけても選考の対象にはなりません。
「よけいなことをした」と、かえって印象を悪くするかもしれませんので、やめましょう。
7応募原稿にはページ番号(ノンブル)をつけた方がいいのですか。
選考の過程で、コピーを取ることがあります。また、何らかの理由で、用紙がバラバラになるかもしれません。ノンブルがないと非常に困ります。必ず、入れましょう。要項に位置の指定がなければ、用紙の左側(上、中ほど、下)か中央下でいいと思います。通常、右上を綴じるからです。
また、表紙やあらすじは数に含まれません。ノンブルは本文だけにつけます。
8応募要項に「あらすじ(梗概)を800字以内で」とありました。どういうことに注意すればいいですか?
まず、字数制限は必ず守りましょう。
それから、物語の結末まできちんと書きましょう。「さて、犯人は誰か、詳しくは原稿でのお楽しみ」というのはいけません。
また、本文に書ききれなかったので、と、あらすじにテーマや設定を書くのもやめましょう。
あらすじは、選考をする人が原稿より先に目を通すこともよくあります。ここで真っ先に印象を悪くしないように、心を配りましょう。
本文と離れた場合を考慮し、欄外にタイトルと作者を明記しておくことをお勧めします(それは800字に含めません)。
9規定の上限枚数より一行オーバーしてもいけませんか?
いけません。公募は全員が同じ条件で競うから、公平なのです。規定をはずれると、たとえささいなことでも、それが理由で選考外になったとき、文句は言えません。
10規定の枚数の下限が決められていないとき、枚数が少なくても、評価に影響しませんか?
規定外ではないので、それが理由で選考外にはなりません。とは言うものの、賞によっては、「これだけ枚数に余裕があるなら、もっと書き込んで完成度をあげることができたのではないだろうか」という印象を選考員にあたえる可能性もないとは言えません。
しかし、最終的には自己判断です。「規定は10枚だけれど、わたしのこの作品は9枚で完璧だ」と思われるのなら、それで応募されてよいと思います。
11ぜひ読んでほしいので、選考委員の方へ意気込みを記した手紙を添えました。
応募要項に指定されていないものはすべて、印象を悪くします。意気込みやアピール、おわびなどは、選考の対象にはいっさいなりません。
登場人物の一覧表や目次や物語舞台の地図も、選考の対象外です。

体裁編

12ちゃんと推敲したつもりなのですが、打ち出したら誤字がありました。手書きで修正してもいいでしょうか。
1〜2文字なら、修正液などで消す・切りばりするなどして手書きで直したり、記号を使って挿入したりしてもいいでしょう。多いときは打ち直して、そのページを印刷し直します。
特に短編原稿など、字数の多い挿入は「規定枚数超え」にならないかどうかもチェックが必要です。
作業の際に消しゴムのカスなどが出たときは、きれいに取り除いてください。
誤字は「ゼロ」に越したことはありません。特にパソコンの場合、直して調整することも手書き原稿よりは容易ですから、できるかぎり「見た目も美しく」したいものです。
13原稿用紙に印刷するのは読みにくいと聞いたのですが、本当ですか?
(質問1にもありますが)やめましょう。原稿用紙の枠線が干渉して、非常に読みづらいです。
試してみてください。
もともと原稿用紙は字数換算をしやすくするための「手書き時代のツール」ですので、パソコンが20×20に打ち出してくれるなら、原稿用紙は必要ないのです。
(ただし、白紙に打つときにも体裁には気をつけねばなりません。後述します)
パーソナルワープロが普及しはじめた時期には、要項に「原稿用紙に印刷不可」と書かれることもよくありましたが、最近は常識として「白紙に印刷する」が定着してきたようです。ですから、「不可」と書かれていなくても不可です。
(もちろん、主催者側の何らかの理由で「必ず400字詰め原稿用紙で」と規定されていれば、パソコン利用の方も原稿用紙を使ってください。どの質問にも共通することですが、応募要項は熟読してください)
また、長編の場合は、わざわざ20×20にする必要はありません(用紙の枚数が増え、「めくる回数」も増えるので、避けましょう)。要項に指定がなければ、30×30、30×40など、1枚の白紙に400字詰め原稿用紙2〜3枚が分が入るようにします(要項に「字数×行数」の指定があるときは、もちろんその数字を厳守します)。


14パソコンで作成した作品を読みやすく印刷できる方法はありますか。
基本は「字間は狭く、行間は広く」です。

パソコン(ワープロソフト)の「書式設定」をいろいろ試してください。
文字は小さすぎても読みにくいですが、用紙が余るからといってやたら大きくする必要もなく
(12ポイントくらいが標準でしょう)、まわりに十分余白をあけてください。
きれいに印刷できる書式を作れたら、それを登録しておくことをお勧めします。
15読みやすいフォーマットと活字の設定見本があれば教えてください。
公募ごとに応募用フォーマットが異なるので、ここで具体的な「見本」を提示することはできません。
質問14にあるように、とにかく「字間は狭く、行間は広く」です。
字間と行間の空白の幅が同じくらいだと、原稿はギンガムチェックのよう。「横にも読めてしまう」ものになります(ただし、横に読んでも意味不明です)。
字間はぎりぎりに狭くし、行間はくっきりと白く見えるくらいに空けますと、原稿は「ストライプ」のようになります。
一度、「これはいいな」と感じるスタイルを見つけたら、しっかりと数値を登録しておいてください。
実際に応募原稿を見ると、行間もまわりの余白もフォントもまちまちだったりします。でも、ちゃんと気を遣った原稿は縦に読めるのです。
16印刷時、字体で気をつけるべきことはありますか?
ごく一般的な「明朝体」がいいと思います。ゴシックでは線が太すぎて、字の大きさによってはつぶれがちになることもあります(賞の規定によってはA4サイズに40×40、などという印刷の仕方もありますので)。
また、書体名に「P」がついているものは「プロポーショナルフォント」といい、「体裁をよくするため」に自動的に字間を詰めたりすることがあります。使わない方が無難です。応募原稿にとって「よい体裁」とは、20なら20、40なら40と、律儀に一行当たりの字数を守ることです。
ただし、行末の「禁則処理」は必要です。ワープロソフトには、処理方法を決めるところがあるはずです。探して設定してください。
行頭に来てはいけない記号(句読点や閉じるカッコなど)は、前の行の末尾につくよう「ぶら下げ」に設定します。その行は記号の分、字数が多くなる(はみ出す)ことになりますが、それでかまいません。
17キャラクターのせりふごとに、字体を変えたいのですが?
あまり意味がないと思われます。読み手(選考委員)に「うっとうしさ」を与える可能性もあります。また、最終選考のために全候補の原稿(データで提出)を同じ書式に打ち直す賞も存在しますので、字体や書式の「工夫」が活かされないこともあるでしょう。
同様に、部分的な色替えも無意味になる可能性が高いです。応募原稿のコピーをとって、それを選考委員に回す賞も多いからです(色によってはコピー時に薄くなり、読み取りにくいだけです)。
18その他、印刷のときの注意は?
「コピー用紙」等の名称で売られている白紙でかまいません。さまざまな用紙が売られていると思いますが、応募の場合は表面のなめらかな、「試し刷りに大量に使う紙より、ワンランク上の紙」をお試しください(最上級である必要はありません)。
応募原稿はラブレターである、と想像するのもいいかもしれません。それなら自然に、インクの乗りのいい紙で、誤字脱字もなく、書式も読みやすく……と工夫できるのではないでしょうか。
今どきはないと思いますが、もしワープロ専用機をお使いの方がありましたら「感熱紙」の使用は厳禁です(印刷が消える場合があります)。
19同人誌に載った誌面をそのまま、あるいはコピーして送ってはいけませんか?
「コピーでも可」と要項に書かれている賞以外、厳禁です。要項にある原稿体裁を守りましょう。
20原稿の綴じ方を教えてください。
右上で綴じてください。10枚〜15枚程度であれば、ホッチキスで大丈夫でしょう(ただし、針ははずしづらく、要項で「ホッチキスは不可」という場合もありますから、注意してください)。逆に、ゼムクリップははずれやすいので避けたほうがいいでしょう。
位置も、綴じ方も、要項に指示があれば従ってください。
はずれにくさから、ダブルクリップを使う方が多いようです。サイズによってはかなりの厚みがあっても留めることができます。ただ、角が尖っているため、封筒を破らないよう、留め方、封入の仕方に気をつけてください。
21原稿(本文)一枚目にタイトル・作者名等の記入は必要でしょうか?
要項に指示がない限り無記名です。選考の多くは、応募者の名前を伏せて行ないます。名前等が記入されていると選考のとき、消すという手間をかけることになります。タイトル・作者名等必要事項は、原稿の表紙に、要項に従って記入しましょう。また要項に疑問があれば、各自主催者に問い合わせることをおすすめします。
応募者の名を伏せるという観点からも、原稿用紙一枚一枚のヘッダー(フッター)に名を入れるのもやめましょう。
22表紙はどのように書けばいいのでしょうか?
要項に従い、必要事項を記入しましょう。
表紙のタイトル、本名、筆名、住所にはルビをつけるといいでしょう(特に複数の読み方がある固有名詞にはご注意を)。
要項になくても、携帯番号やメールアドレスは記入することをおすすめします。また、長編などの作品の場合は、400字詰め換算枚数の記入も必要です。
23略歴・応募歴・受賞歴は書いたほうがいいですか? また受賞歴を書くよう指示のある場合、どの程度記入したらよいのでしょうか?
要項に記載された以上のことを書く必要はありません。書くことを求められたら、受賞歴は同ジャンルの公募(童話・児童文学の賞)のみ、「あれば」書く、でいいと思います。その場合は「第〇回××童話賞・佳作」のような簡潔な書き方にしましょう。あくまでも「受賞」の有無ですので、最終選考以下の成績(落選歴)は書かないほうが無難です(「ある程度書ける人なのだな」と思われるか「イマイチ弱いものしか書けないのだな」と思われるか、わからないからです)。
また、略歴は、書くとしても出身地、最終学歴、現在の職業くらいでいいと思います(履歴書のように職歴や資格を列記する必要はありません)。作品に関連する専門知識をお持ちなら、書き添えてもいいかもしれません(たとえばスポーツが題材の応募先に「元オリンピック強化選手」と添えるなど。選考への影響は確実ではありませんが)。
24要項に「あらすじ(梗概)を添付すること」とあります。これは作品と一緒に綴じるべきでしょうか? また、理想の綴じ方があるのでしょうか?
あらすじや梗概の添付を求められた場合は、表紙の下、本文原稿の上へ、一緒に綴じればいいと思います。
25長編など枚数が多くて一部に綴じられない場合、ふたつに分けてもよいのでしょうか? その場合、どういったことに注意したらよいでしょうか?
分けてもいいでしょう。ひとつの目安として、一分冊200枚といわれています。ただし、上でもお答えしたように、今は長編を20×20で印刷しないのがスタンダードです。要項に指示がない場合でも30×40などで印刷しましょう。そうすれば、300枚程度の児童文学でも、用紙が200枚を超えることはないはずです。
(万一分冊になった場合は、表紙はそれぞれ全く同じもの=作者の住所や電話番号も書いてあるものをつけ、タイトルの後に「二分冊の第一冊 1枚目から200枚目」などとします。
あらすじは第一分冊の最初のみに添付するだけでよいでしょう)

発送編

26原稿は書留で送ったほうがいいのでしょうか?
普通郵便でもかまいません。でも、大事な原稿ですので「追跡」が可能な送り方のほうが安心でしょう。簡易書留、あるいはレターパックライト(受け取る側に手数がかからないタイプ)を使うのはどうでしょうか?
27封筒に合わせて原稿を折ってもいいですか?
主催者が選考のためにコピーをとる場合もありますので、折らずに、原稿用紙サイズの封筒を使いましょう。
また原稿が厚い場合、封筒の大きさや丈夫さも、破損などのトラブルを避けるために工夫してください。
28原稿はビニールで包んで送った方がよいと聞きました。他に原稿を無事に送るため工夫できることはありますか?
ビニールで包めば水に濡れることは防げますので、原稿への配慮は充分だと思います。ただし、ポストインから配達までのあいだに雨の心配がないなら、余計な包材はないほうがいいでしょう(投函時に雨なら封筒をビニールにくるんでポストに持っていけばいいのですから)。
短編(原稿自体が薄いもの)の応募時は、台紙を入れる、クリアファイルに挟むなど、原稿をたるませない工夫もあってもいいかもしれません。ただし、過剰な包装は主催者への迷惑になることはご承知おきください(そのような応募作が1000も2000も集まる場面を想像してみましょう)。
29早目に送ったほうが、選考に有利というのは本当ですか?
そんなことはありません。応募作品は〆切り以後に集計され、選考されますので、特に早く送ったから有利ということはありません(いつ到着したかは選考時のチェックポイントになりません)。しかし、郵送トラブルがあるといけないので、〆切まで2〜3日の余裕をみて送られることをお勧めします。
30〆切は絶対守らなければいけないでしょうか? 1〜2日遅れたら読んでもらえないのですか?
〆切に間に合わないとわかっているのでしたら、次回にするとか他の公募に応募されることをお勧めします。〆切後に到着した場合、自動的に次回に回されるか、そのまま失格になっても抗議できません。全応募者が同条件……でなければ、その公募は公平なものとはいえなくなってしまいます。
また、〆切ギリギリに書き上げるとしたら、充分な推敲もできていないということですし、〆切を守るのは、プロを目指すのであれば必須条件のひとつです。公募時代から訓練と考え、〆切を守る努力をしましょう。
31封筒の表の書き方ですが、宛名が***係となっていたら、そのまま書いて投函していいのですか?
「***係」の下には、「御中」をつけましょう。
例:日本児童文学者協会「長編児童文学新人賞」係 御中
一般的な定形外封筒の場合、左側に「原稿在中」と朱書すれば、応募原稿であることがわかるでしょう。レターパックライトなら内容物を書く欄があります。
封筒の裏、レターパックの所定の位置に、ご自身の住所氏名も書くことをお忘れなく。

その他

32応募作って、本当に読まれているんですか?
落選すると「自分の原稿は読まれたのかな?」と考えたくなりますよね。
読まれています。選考委員(「選考の先生」として名前が公表されている方たち)が応募作のすべてを読む賞もありますし、あらかじめ予選を行って、最終選考に残ったものだけを選考委員が読む賞もあります。
賞にもよりますが、予選は、作家や評論家、翻訳家、編集者など、児童書に詳しい人たちが受け持つことが多いようです。
いずれにせよ、「あらすじ」だけを読んで選考からはずされるというようなことはなく、必ず誰かが最後まで作品を読んでいます。
応募する側が全力で作品を書くように、選考する側も「良い書き手」「良い作品」を見出すために全力を傾けているのです。
33募集要項に「アマチュアに限る」「児童書を出版したことのない人に限る」とありますが、これはどういうことでしょうか。
一般的に考えて「商業出版」をしたことのない人に限る、ということでしょう。同人誌掲載や自費出版の本を出したことがあるというのは、この場合「アマチュア」の範疇と考えてよいと思います。
しかし、のちのトラブルを未然に防ぐためにも、応募作に「これは同人誌『プロモーション』2020年12月号に載せたものです」等、一言そえておくとよいでしょう。
アンソロジーに採用されて印税をもらったことがある、絵本を出版したことがある、本は出したことはないけれど、作品が新聞や商業誌に載ったことがあるなどの「アマチュアの範疇に入るのか迷う」場合は、応募したい賞の主催者に問い合わせしてから、応募したほうがよいでしょう。
なお、新人賞という名称でも、プロや本を出したことのある人が応募できる賞もあります。応募の規定をよく調べましょう。
34応募にあたって、過去の受賞作を読まないといけないのでしょうか?
「読まないといけないもの」ではないでしょう。ただし、前年の受賞作と同じ題材や似た展開を避けるために、どんな作品だったかをチェックするのはお勧めしたいです(前年の大賞が猫の童話なら今年は猫の童話は大賞を獲りにくい……そういうことは起こるかもしれませんので)。
しかし、たとえば「ファンタジー作品募集」と、はっきりとうたっている賞に、過去追想風エッセイとか、どう読んでも純文学系私小説などを送っても、それはカテゴリー外になり、受け入れられる可能性はとても低いでしょう。そういうカテゴリーエラーをさけるための下調べとして、過去の受賞作を見てみるのはよいことだと思います。
ただ、「受賞・出版されやすい傾向をさぐる」目的ならば、受賞作をたくさん読んだ方が有利かというと、一概にはいえません。
よほど主催者側の内部事情や、出版事情に詳しい専門家なら別かもしれませんが、そうでない人が「受賞・出版されやすい傾向」を受賞作から探り出すのは、とてもむずかしいことではないでしょうか。
35応募に際してペンネームを変えるのはよくないでしょうか? たとえば最終選考に二回残ったのに、ちがうペンネームにしていたら、前回選考に残った人とは別人に思われて、不利になるなどのケースはあるでしょうか?
あまり影響はないと思われます。
応募者の情報を伏せて選考する賞なら、選考委員からは本名もペンネームもわかりません(有利にも不利にもなりません)。
通常、応募の際には本名と住所を書いて出しますから、最終選考に残る、あるいはとても印象深い作品であれば、主催者側が本名をチェックするでしょう。そこで同一人物とわかります。
36自信作なので、多くの賞で読んでもらいたいです。何部も印刷して、一斉に複数の賞に応募してはいけませんか?
いけません。
同時(一斉)に複数の賞に送るのは、二重応募と呼ばれるもの。
二重応募と盗作は、作家志望者なら絶対にしてはいけない「守りごと」です。
二重応募が発覚すると、ほとんどの場合、受賞が取り消しになります。
もし、ふたつの賞で受賞していたら、タイトルや内容が公表されますから、二重応募が白日の下にさらされることになります。一方、または両方とも取り消されても仕方ありません。
一か所のみに応募し、結果を待ちましょう。
37同じアイデアをいろいろに書き直したものなら、同時に応募していいですか?
かなり書き直して「別の作品」にしたつもりでも(たとえば片方が短編、もう一方は300枚の作品、といったかなり大きな改稿でも)同じ案のものを同時に複数の賞に応募するのは、あとで主催者側が知った場合、トラブルのもとになる可能性があります。避けたほうが無難でしょう。
一か所のみに応募し、結果を待ちましょう。
38落選したものを他の賞に応募してもいいでしょうか? また落選したものを書き直して応募してもよいでしょうか?
落選が正式に確定した(落選の通知が来た、受賞者の名前が公式の場で発表された)場合は二重応募にならないので、基本的にはかまいません(ただし、他での落選作は応募不可という賞もあります。不可と書かれていなくても、落選作の応募を快く思わない主催者もあります)。
落選が確定したものを改稿して応募するのは問題はないでしょう。ただし、どれほど「良くなっているか」は作者自身に判定できないことも多いのです(誤字の修正程度では「改稿」とはいえません)。次の応募先でも落選する可能性はあります。改稿する時間を使って、新作を書くほうがいいかもしれません。
39募集要項に「未発表作品に限る」とありますが、「未発表」というのはどういうことなのでしょうか?
「商業出版したもの」「新聞・雑誌などで活字になったもの」「公募で入賞したもの」はもちろん、最近は「自分のホームページや投稿サイトにアップしたもの」も「発表済み」と見做される可能性が高いです。それらに該当しない場合も、公募によっては「他の賞で落選した作品は不可」や「他人の目に触れた作品は不可」(講座や教室で書いたものは応募できません)というものがあります。入賞したのに後に取り消される、ということがないよう、どの賞の場合も要項やFAQ(よくある質問)は隅々まで読みましょう。
自分で判断できないときは、主催者に問い合わせてください。

また、主催者からOKをもらっても、トラブルを避けるために応募作品に「この作品は『いそがしい部長の部屋』というサイトで2020年1月から3月まで掲載していました」等、書き添えておくとさらによいでしょう。
40入賞しても本にならなかったとき、著作権が主催者に移ってしまって、その後、作者が自由に使えないというケースがあると聞きましたが。
「著作権」は著者の権利です。簡単に他者(公募の主催者)に譲ってしまっていいでしょうか?
企業主催の童話賞の一部では「入賞作品の著作権は主催者にあります」などとなっているようです。これは受賞作を使えるのは主催者であるということで、極端な場合、その作品がベストセラーになっても、映画化されても、応募した作者に見返りはないかもしれません。
出版社の新人賞の場合は、A社で受賞した作品はA社が出版権をもつのが普通ですから、「選考委員に認められた作品なので、もっと大手のB社で出したい」といっても通りません。
プロを目指す方は特に、送り出した自分の作品がどうなるのか、注意を払いたいものです。権利の扱いは賞ごとに違いますから、必ず要項に目を通し、不明な点は主催者に確認しましょう。そのうえで「あやしげ」だと思えば、応募を見送る判断も必要です。

「要項を熟読(募集している賞のサイトがあるときは、それも熟読)」
「自己判断(まわりの友人等の判断を含む)ではなく、主催者に確認」
ご健筆を、そして応募が良い結果になりますことをお祈りしています。