藤田のぼるの理事長ブログ

夏休み、そしてヒロシマ 

【今日から夏休みです】

今日から僕は“夏休み”です。協会の事務局は、3人で交替で一週間程度ずつ休みを取るというパターンで、僕は今日12日から日曜日まで。ちょうどというか、なんというか、月刊『子どもの本棚』の古田足日追悼特集の総論というのが8月14日締切りで、今年の夏休みはこれで全部使いそうだなと、最初から思っていました。少し前から全集を読み返したりという準備はしていたので、早速今日から書き始めましたが、序論めいたことを書いただけで既定の長さの半分近くになってしまい、長さとの戦いになりそうです。

【皿海さんとの電話】

昨日の夕方、「さあ、明日から夏休みだ」という感じで仕事を片付けていた時、会員の皿海達哉さん(広島県福山市在住)から事務局に電話がかかってきました。用件はすぐ終わり、皿海さんが広島の子どもの本九条の会のことでとても忙しいという話になりました。今年の6日の広島市長のスピーチと9日の長崎市長のスピーチには格段の違いがありましたが、何年か前から例の田母神氏やその一派が広島で集会をしているらしいのです。さすがに8月6日にはできず、6月8日(!)にしているらしいのですが、なんとそこに広島市長が出席して「来賓あいさつ」をしているというのです。これに断固抗議すべきという意見と、そういうことには力を振り向けずという意見があり(このあたり、僕の聞き方は正確でないかも知れません)、「藤田さんは、どう思う?」と問われました。また、皿海さんのかつての教え子が、田母神氏らの主張に同調していてショックだったという話も聞きました。

僕はその時、最近読んだ一冊の本を思い出していました。C・ダグラス・ラミスという人の書いた『戦争するってどんなこと?』という本で、図書館でたまたま見つけたのですが、平凡社の「中学生の質問箱」というシリーズの一冊です。著者は、かつて海兵隊員として沖縄に駐留した経験を持つアメリカ人で、その後日本で大学教員などを務め、今は沖縄に住んで発言している人です。第1章の「日本は戦争できないの?」から第6章の「軍事力で国は守れないの?」まで6つの質問に答える形で書かれていますが、まさに今問題となっている交戦権や(集団的)自衛権のことなど、大変明快に書かれています。少し長くなりますが、例えば第2章の「戦争ってどんなことするの?」の冒頭の質問「戦争に行ったら兵士はどんなことするの?」という質問に対して、著者は次のように答えています。

【戦争に行ったら兵士はどんなことするの?】

〈兵士の仕事は敵を殺すことです。

日本では戦争というと、国のために死ぬとか、命をかけるとかのイメージが浮かんでくるかもしれません。(略)けれども、死ぬのは兵士の仕事ではありません。ぼくは3年間海兵隊で任務についていて、予備役の期間も入れれば10年間になりますが、その間死ぬ訓練をしたことはいちどもありません。(略)

ほかの組織とちがって軍の特徴は人を殺すことです。ですから兵士の仕事は殺すことで、もちろん、反対に相手に殺されるかもしれません。〉

なんというシンプルな、そしてリアルな回答でしょう。僕は、皿海さんの教え子の一人がそうであるように、少なくない若い世代が、田母神氏らの主張に惹かれるのは、「本当に今のままで日本を守れるのだろうか」という心配が強いからだと思います。そしていわゆる平和勢力の側が、これに対して「とにかく戦争はいけないのだ」と、それはそうなのですが、あまりリアルでない答しか持ち合わせない(という側面がある)ことが、そうした若い世代を平和勢力の方に引き寄せられない一因だと思っています。そして、それは戦争児童文学の課題でもあると思っています。そんな折に、この本に触れ、とても意を強くしました。

夏休みの間に、このことを、皿海さんに書き送ろうと思います。それから、特に沖縄に関心をお持ちの会員の皆さんには、この本ぜひ読んでほしいと思います。(この項終わり)

2014/08/12