編集部だより

『日本児童文学1・2月号』を読む会

 編集部だよりをご覧のみなさま、こんにちは。山﨑道子さんからバトンタッチをして今回より担当となりました編集部の荒木せいおです。よろしくお願いいたします。

 今回の内容は、2月27日(月)18:00よりおこなわれた「日本児童文学1・2月号を読む会」の報告です。編集部の相川美恵子さんがその様子を生き生きと伝えてくださいます。

 

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  2023年1-2月号を読む  2023年2月27日(金)18時~  リモート開催

         『日本児童文学』を読む会 まとめ

 

 皆さん、お久しぶりです、編集部員の相川です。もう3月。春が来ます。嬉しいです。

 

 ずいぶん昔ですが、私は宇治市の山の中にある人形劇団にいました。ある春のこと。どういう流れか忘れてしまいましたが、焚火を囲んでの大宴会となりました。はこべ、よもぎ、たんぽぽ、つくしなんかを総出で採りに行き、てんぷらにしたりおひたしにしたり。よもぎはもちろん団子に。意外においしいのはたんぽぽの花の天ぷらなんです。飲みかけの貴重な日本酒と湯飲みをてんでに持ち寄って、一晩じゅう騒ぎまくりました。なんせ山のなかですからね。茶畑しかありません。いくら喚いても犬がしっぽを振るぐらいです。というわけで、タンポポを見つけると、今でも「おいしそうだなぁ」と思ってしまいます。

 

 さて今年最初の「読む会」が2月27日(金)の18時から、例によってリモートで開催されました。今号は創作特集です。編集部からは司会担当の奥山編集長以下、小川さん、相川が参加。また、荒木さんは今期からの編集部員でかつ、今回のゲスト(新企画「作家とLunch」で奥山編集長とともにインタビュアーを担当)です。さらに今号に短編を書いてくださったはらさん。はらさんも今期からの編集部員です。どうぞ、よろしく。

 

 ご参加いただいた皆さんは次の通りです。小学校で図書館司書をされている川嶋さん。児童文庫を年に200冊は読んでいらっしゃいます。小誌からも年度回顧のご論考や、座談会へのご参加をお願いしています。今号から創作時評をお願いしている松嶋さん。児童文学批評家の西山さん(かつて小誌の編集長もされています)。小学校の先生のHさんは25年ぐらい前から児童文学の紹介を続けていらっしゃいます。会員で詩人のIさん。そして今回初めてご参加くださったのはOさん。幻想的な作風のものを書いていらっしゃいます。偶然にネットでこの会を知ってくださったとのこと。ようこそ!!

 

〈詩、俳句、短歌、マンガについて〉

 早速、荒木さんに口火を切って頂き、ひとまず詩からマンガまでのところで、自由に感想や意見を交わしました。歌人でもある奥山さんからは、俳句と短歌の違いについてコメントがありました。またHさんからは、子どもたちに短歌を書いてもらうこともありますよっていう、現場の先生ならではのご発言が。

 

 なかでも、はっとしたのは、西山さんからのご指摘でした。今号のテーマ「やめる?やめない?」と関係づける形で、西山さんが「だけど、子どもって、やめる前にまだ、始めてないってところがありませんか?」と問うたんです。川嶋さんからも強い同意の発言がありました。ああ、そうか、そうだね、ってリモート越しに気づきの輪が広がった瞬間です。こういうときですね、みんなで一つの作品を読む喜びを感じるのは(このタイミングで相川のおなかがぐうって鳴いたのが、個人的には情けなかったですけど)。

 

〈短編からノンフィクション、創作時評まで〉

 そうそう、皆さん、岡田淳さんのマンガはいかがでしたか?『プロフェッサーPの研究室』(岡田さんのマンガ集)を思い出させるシュールな世界が見事ですよね。

 

 田中哲弥さんの「夏休みの心得」も、どこか時空間の遠近法が溶け出しているというか、たわんでいるような作品です。いままで聴く側に徹していらっしゃったOさんですが、おずおずと次のような感想を語ってくださいました。「ボク、この主人公の気持ち、めちゃくちゃわかります。めっちゃわかる。「どうでもいい」って書かれてるの、ほんとにそうだと思いました。で、最後の「どこにでも行ける」って、なんか、すがすがしくって、前向きで、この作品、ボク、好きです」。

 

 作品が、本当にそれを求めている人のところに届いた、と感じました。作品にとっても読者にとってもこんな幸福な出会いはないですよね。その嬉しさを共有できた私たちもまた、とっても幸せだったのは言うまでもありません。

 

 こんなひどい先生っているの? いるよ、主人公の心に投影された先生像なんじゃないかなぁと話が盛り上がっている隣で、話題ははらさんの「おはなしは風にのって」へと。幼年物を書く難しさなど語り合いました。ですが、雑誌というのは不思議なものです。やめるかやめないかというシリアスなテーマに迫っていく作品が並び、タイトルからして衝撃的な「摘便クィーンのこと」(森忠明)や「幻の相模湾上陸作戦」(池田ゆみる)も控えます。優しく楽しいおはなしがここにあって良かったァ。

 

 その「幻の相模湾上陸作戦」について。荒木さんからは「作者の実家の物置に防毒マスクがあった」辺りをもっと知りたかったという発言がありました。毒ガス製造と本土上陸作戦というとても大きな事実を限られた枚数の中で同時に取り扱うのは難しいですよね。例えば毒ガスについては『大久野島からのバトン』(今関信子)という作品も出ていますし、ポイントをぎゅうっと絞って徹底的に掘り下げるみたいな作業があると、素材が素材だけに、すごく読みごたえがあるノンフィクションになるよねって話をしました。

 

 ところで、苦労が多いわりにねぎらわれることが少なく、どんなふうに書いてもたいてい文句を言われるのが創作時評欄なんです。そんな過酷(笑)な時評欄を担当いただいている松嶋さんに、今回、体験者からアーダコーダとアドバイスがありましたが、要するに「ガンバレー!!」に尽きます(笑)。作品紹介と批評のバランスをどうするか、テーマで括るか括らないか、それらに正解はなくて、その時々の担当者が格闘するしかありません。もう、好きに論じちゃってください。

 

〈「作家とLunch」&新連載など〉

 会も中盤を過ぎ時間は7時半を回ったあたり、司会の奥山さんが、では「作家とLunch」にいきましょう、第一回は石川宏千花さんです、と言い終わるやいなや「はいはい、どうしてもいいたくてっ!」と西山さんが。学校の教室なら、たぶん立ち上がった勢いで椅子ががたんと勢いよく音立てて後ろにひっくり返っていたと思う。「せっかくのLunchだよ、作家さんとランチだよ、だったら、もっと食べ物のことも含めて、普通のインタビューでは聞けないことを聞こうよっ、もっと作品から離れていいんじゃないかなっ」。これを皮切りに、まあ、皆さん、アーダコーダソーダドーダと、必死でメモを執っている私の気も知らず、「名前ノートって面白いよね」「書く側にとって、とても参考になりますよね」、「×〇△…!!」「そうそう、カジュアルなコーナーで愉しい!!」「〇〇、×!<*⁂、△△…ね!」(…相川は途中でオシゴトをやめたくなったな、うん)――というわけで、皆さんの期待を背負って新企画の開始です!!

 

 それからこの企画、まとめて本にしたいと編集長の奥山さんが言っております。そうなったら紙面の都合で割愛せざるを得なかった部分も載せられるし、メニューの写真もカラーになるかも。ううん、おいしそう(笑)。

 

 さて、最後は長谷川まりるさんの『趣海坊天狗譚』です。部落差別をテーマに据えたという作品の特異性もあり、掲載に踏み切るまでの過程はなかなかのものでした。幸い最終話までの完成原稿が上がっていたので、それをもとに編集部内で検討を重ね、長谷川さんともやりとりを繰り返しました。作家さんの表現は最大限尊重しなければなりません。同時に発表したさいの反応に対しては編集部として責任を負わなくてはなりませんし、場合によっては編集部は作家さんを守らなくてはなりません。ですから単に訂正の可否だけでなく、長谷川さんと私たちとの信頼関係を確認することもとても重要でした――。などというこちらの葛藤はそれはそれとして、長谷川さんは柔軟に手直しをしてくださいました。

 

 そんなことがあったので、川嶋さんから「面白くて面白くて」という感想が出たときは私はやったぁ、と思いました。他にも皆さんからいろいろな言葉をいただいて嬉しかったです。

 

 というわけではや、8時半を過ぎ、そろそろ会を閉じることになりました。ご参加いただいた方から一言ずついただいたのですが、その中からOさんの発言を挙げさせてください。「ボク、こういう会、初めてでした。みんなで作品について話すのって楽しいと思いました。次も参加したいです」。いえいえ、こちらこそよろしくです。

 

 ご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。また次回もお会いできますように。

                                相川美恵子

※今回の「読む会 まとめ」は、当初ブログ内に誤解を招く表現がありましたので修正しました。お詫び申し上げます。(「日本児童文学」編集部)

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 相川さん、力のこもった報告をありがとうございます。〈作品が本当にそれを求めている人のところに届いた〉という一文、とても素敵でした。

 日本児童文学3・4月号も発行されました。読む会も企画しますので、お待ちください。

 

 

2023/03/07